2025年1月12日(日)、AUTOBACS JEGT GRAND PRIX 2024シリーズのトップリーグ最終戦が東京オートサロンのステージで開催され、「EVANGELION e-RACING × ウエインズトヨタ神奈川」が参戦した。
EVANGELION e-RACING × ウエインズトヨタ神奈川
コースコンディション:ドライ⇒ウェット⇒ドライ
コース:スパ・フランコルシャン(ベルギー)
第1戦・第2戦は選手が各々の自宅等から参戦するオンライン開催であったのに対し、この最終戦は唯一選手が一堂に会し、オフラインで開催される。
自宅の慣れた練習環境そのままに参戦できるオンライン開催と異なり、選手は慣れないシミュレーター筐体はもちろん、約300名を超える観客の注目を浴びるという緊張感を乗り越えてパフォーマンスを発揮しなければならない。
チームは第2戦終了時点でランキング5位、シリーズチャンピオン獲得の可能性が僅かに残されているという、1年前と全く同じ状況。
この舞台で行われた昨シーズン最終戦は見事に勝利しており、選手たちは大きな期待とプレッシャーの中でこの日を迎えることとなった。
これまでの2戦は予選スーパーラップ、ハイパースプリント、レースで構成され、3名の選手がそれぞれのパートを請け負った。
一方で最終戦は、予選スーパーラップと、選手3名がドライバーチェンジを行いながら順位を競うセミ耐久レースという、オフラインならではの構成となっている。
「EVANGELION e-RACING × ウエインズトヨタ神奈川」は、予選スーパーラップを鈴木聖弥選手が担当。レースは第一走者山中智瑛選手、第二走者鷲尾拓未選手、最終走者森本健太選手と、昨シーズン最終戦で勝利したラインナップでエントリー。
使用されるサーキットはベルギーに実在するスパ・フランコルシャンで、急激なアップダウン等変化に富んだレイアウトと予測不能の天候のほか、エンジン全開の区間が長い高速サーキットとして知られる。
実際のサーキットと同様に、天候が変化することが事前に発表され、ドライバーチェンジとタイヤ戦略が勝敗の行方を左右すると予想された。
◆予選スーパーラップ
迎えた予選スーパーラップ。
会場の全員がその1周に注目する一発勝負の緊張感は計り知れない。
鈴木選手は、同じく担当するはずだった昨年の最終戦を体調不良で欠場しており、今回は念願の出場である。
また、今シーズン第1戦の予選では、僅かなミスが響き3番手と悔しい結果に終わっている。
ドライで行われる最終戦の予選、走行前に予想されたラップタイムは2分14~15秒と、自宅の慣れた環境で記録していた鈴木選手のベストタイムであればポールポジションも期待できる。
ポイントランキング下位から走行が行われ、5番目(54号車の機材トラブルによる順番変更のため)の鈴木選手走行時点でのベストタイムは久万田崚選手(105号車)の2分14秒750。
セクター1でアドバンテージを作ったものの、セクター2で僅かに姿勢を崩したことにより、記録は2分14秒490。
しかし、走行を控えるのはポイントランキング上位4台に昨シーズン最終戦でポールポジションを記録した石水優夢選手(54号車)を加えた5台である。
1台1台の走行を祈る気持ちで見守るが、ポイントランキング2位の佐々木拓真選手(52号車)、同1位の川上奏選手(1号車)も鈴木選手のタイムを上回ることはできず、トップをキープ。
念願のポールポジション獲得となった。
◆最終戦決勝
そしてついに最終戦のレースがドライの路面でスタート。
天候の変化が告示されていることから、各車レーシングミディアムタイヤを装着し、まずは様子を見ながらのレースとなる。
第1ドライバーは昨年この舞台で最後尾からの全車オーバーテイクを見せてくれた山中智瑛選手。
ローリングスタートで大きな混乱無く、そのまま先頭で1周目を終えるかと思われたが、終盤の「バスストップシケイン」で奥本博志選手(1号車)にオーバーテイクを許してしまう。
しかし、第1コーナー「ラ・ソース」立ち上がりで奥本選手の後ろにしっかり着けると、右コーナー「ケメル」でアウト側に並び、ストレートでオーバーテイク。
1位に舞い戻って見せた。
1号車はすぐ後方、シリーズチャンピオン争いのライバルである52号車佐々木拓真選手には絶対に負けられない状況であり、山中選手はこの2台に対してプレッシャーをかけながらレースをリードして行く。
5周目の「ラ・ソース」で再度奥本選手が先行するものの、「ケメル・ストレート」の速度差は歴然で、山中選手があっさりと定位置の先頭を取り戻す。
予選より引き続き、やはりドライのスパ・フランコルシャンとGRスープラの相性は良く、抜かれても抜き返す展開が続くかに思われたが、6周目の終盤、ついに雨が降り始めると全車一斉にピットインし、タイヤ交換とドライバー交代を実施。
タイヤはウェット、ドライバーは鷲尾拓未選手でセカンドスティントを戦う。
ピットロードでは今村駿佑選手(1号車)の先行を許し、さらに、激しくなる雨の中、GRスープラが見せたストレートスピードのアドバンテージは失われてしまう。
辛いコンディションの中、巧みなコントロールで走行を続けていた鷲尾選手だが、8周目に宮園拓真選手(52号車)のオーバーテイクを許すと、ウェット路面でのトラクションに利のあるNSXを駆る辻村亮介選手(8号車)にも追い立てられる展開に。
9周目の中盤でポジションを譲ると他車に先駆けて2回目のピットイン、ドライバーを森本健太選手に交代するのと併せてタイヤ交換を行った。
既に雨は上がっており、ドライタイヤへの交換かと思われたが、チームは路面が乾かないと読み、インターミディエイトタイヤで再びコースへ。
他チームと異なる戦略で勝負に出た。
11周目を終えた時点で全車が2度目のピットインを済ませ、この時点での順位は3位。
他車が全てドライタイヤを装着する中、この後路面がどのように変化するか、そしてそれに森本選手がどう対応するかがレースの結果を左右することになる。
12周目、鍋谷奏輝選手(52号車)がドライタイヤでの走行に苦戦する隙を突いて一時は2番手まで浮上するものの、次第にドライタイヤ勢のペースが上がり、乾きつつある路面で消耗したインターミディエイトタイヤとの差は明らかとなる。
タイヤを冷やすためにできるだけ濡れた路面を選んでの走行を余儀なくされた森本選手は8番手までポジションを落とすこととなり、13周目に3度目のピットイン。
ドライタイヤに換装し、9番手でコースに戻るが、前方との間隔は大きく、挽回のチャンスは残されていなかった。
残り2周を走行し、そのまま9位でチェッカーを受けた。
チームは終始無線の不具合と、目の前の会場スピーカーから発生する大音量で、ピットと選手のコミュニケーションが取れないトラブルに見舞われ、最後のピットイン時には、義務となっているドライバー交代が行えなかったことでレースタイムに30秒加算のペナルティを受けることとなってしまった。
◆最終結果
シリーズランキングは、予選スーパーラップ第1位の5pt、レース第9位の3ptを加算し、37ptの第6位で2024シリーズを終えた。
新たにハイパースプリントが導入され、2戦が雨のレースとなった2024シリーズは、GRスープラに足りないスタートの蹴り出し、雨のトラクションが必要な構成で、選手達の実力を示すことができない不本意な結果に終わってしまった。
しかし、最終戦予選ポールポジションの鈴木選手、第1スティントの山中選手を含め、毎戦クリーンな走りで見せ場を作ってくれた「EVANGELION e-RACING × ウエインズトヨタ神奈川」メンバーの今後の活躍にぜひ注目していただきたい。
シーズンを通し、「EVANGELION e-RACING × ウエインズトヨタ神奈川」への応援をありがとうございました。
◆監督コメント
予選では鈴木選手の快走でポールを奪取し、昨年に引き続き優勝で締めくくるべく最高のスタートを切りましたが、決勝では雨に翻弄され車両的にレインコンディションが苦手な事もありドロップ。
更には機材の問題も重なり思っていたような結果とはなりませんでした。
今シーズンは速さはあるがコンディションやBOPに翻弄されうまくいかないレースが多く、最終戦も厳しい戦いとなりました。
ただチーム全員ベストを尽くす事はできたと思います。
選手のみんな、関係者の皆様、応援頂いている方々に感謝いたします。
今シーズンも応援ありがとうございました。
冨林 勇佑
◆選手コメント
ランキング5位で迎えた最終戦、今回も予選のスーパーラップを担当しました。車とコースの相性がとても良かったので「絶対にポールポジションを取る」と今まで以上に気合いが入っていました。迎えた当日は見事に有言実行を果たしてポールポジションを獲得し、決勝を走るドライバーに1番良い位置でバトンを繋げました。
決勝はチーム一丸でレースを進めていましたが、スパウェザーに苦戦を強いられ最後のピットでギャンブルを仕掛けましたが予想が外れ順位を落とさざるを得ない状態になり9位でレースを終え、2024シリーズは6位で終了しました。
レースではなかなかに苦しい展開が続きましたがそれでも決勝を走った山中さん、鷲尾さん、森本さんは本当に頑張っていたと思うのでとても悔しいと思います。次シーズンは良い成績が残せるようにこれからも頑張ろうと思います。改めてチーム関係者をはじめ、シリーズを通して応援してくれた皆様ありがとうございました!
鈴木 聖弥
これまでの2戦を終えてシリーズチャンピオンの可能性が残されており、チャンピオンを獲得すべくチーム全体で連日連夜練習や研究を続けてきました。
今回は決勝レースの第一スティントを担当させていただきました。
予選では鈴木選手の素晴らしいアタックラップでポールからスタート。
タイヤ摩耗が厳しく終始ライバルチームからの追い上げを受ける形になりましたが、GRスープラのストレートスピードの速さを活かしトップをキープすることができました。
後続を引き離したい展開に持ち込みたかったのですが、それは叶いませんでした。その後、雨が降るコンディションになったため鷲尾選手そして森本選手にバトンを渡しましたが、雨のコンディションはMR車両と比較すると厳しいものがあり、最終的には9位でフィニッシュとなりました。
今シーズンもEVANGELION e-RACING ×ウエインズトヨタ神奈川から出場させて頂き、このメンバーでシーズンを駆け抜けられたことは大変嬉しく思っています。
関係者の皆様、そして応援してくださったファンの皆様に感謝申し上げます。
山中 智瑛
ラウンドファイナルでは、大雨の第2スティントを担当しました。
スーパーラップで鈴木選手がポールを獲得し、また第1スティントの山中選手も1位をキープしたまま、大雨が降るタイミングでピットイン。
私は1位で襷を渡されました。
しかし、2番手の選手のピット作業が早く2番手に後退。
その後もGRスープラの特性上ウェットコンディションが合わず、ペースを上げられなかったため防戦一方の戦いを強いられてしまいました。
必死にブロックし続けましたが徐々に後退。
レース前に、路面が乾かない想定で他チームと違う戦略を取って賭けるという戦略だったため、1周早くピットインしました。
しかし、すぐに路面が乾きもう一度ピットインが必要となり、勝負権を失い結果9位でレースを終えました。
また機材トラブルで無線が機能せず、チームとのコミュニケーションが全く取れませんでした。
本当に悔しいです。
また、チームの皆様、関係者様、応援して下さっている皆様に不甲斐ない結果で終えてしまったことは申し訳ない気持ちでいっぱいです。
機材トラブルとは言え、レース全体を見る力が乏しかったため、改善して来シーズンもっと強くなって戻ってきます!
応援ありがとうございました!
鷲尾 拓未
今回、第3スティントを担当しました。
最終戦はスパ・フランコルシャンが舞台となり、決勝ではレインコンディションになるというレースでした。
SLでは、鈴木選手が見事な走りをしてくれてポールを取ることが出来ました。
迎えた決勝レースでは第1スティントの山中選手がトップを死守しピットに帰ってきてくれましたが、雨が降り始め順位を大きく落としてしまう展開となりとても苦しいレースでした。
今シーズン1度も勝利出来ずに終わってしまい今までで1番悔しいシーズンでした。
中々結果が残せない中、応援して頂いたファンの皆様、スポンサーの皆様、チームの皆様には大変感謝しております。ありがとうございました。
森本 健太
最終戦はドライバーではなくスポッターとしてチームのサポートに徹しました。
しかしながら、決勝レースでは無線のトラブルで選手とのコミュニケーションを取る事がほとんど出来ず、また、事前に決めていたタイヤ戦略も機能せず、非常に悔しい結果となってしまいました。
今シーズン、02号車からJeGTに初参戦となりましたが、私自身として非常に学びの多いシーズンとなりました。
今期得た学びを来シーズンまでにしっかりと物にして、ファンの皆様に喜んで頂ける走りを見せたいと思います。今シーズンも皆様の沢山の応援、本当にありがとうございました。
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